特別講演    
Trial Results and Guidelines for CRT: Are they compatible?
座長 松本 万夫埼玉医科大学国際医療センター 心臓内科
演者 David HayesMayo Clinic, Rochester, MN, USA
概要

Approaching two decades of experience with CRT, the discipline has significantly matured, but indications continue to expand and guidelines are regularly updated to keep pace with the expanded evidence base.

It is now well established that CRT can improve quality of life, decrease hospitalizations for heart failure, improve mortality and result in reverse remodeling of the left ventricle. The early focus was on patients with significant decrease in LVEF in NYHA Class III and IV heart failure patients but there is now ample evidence that Class II patients benefit in a similar fashion. Limited and inconclusive trial data exists for Class I patients but trials that are underway should begin to determine the level of benefit for these patients. The benefits of CRT in patients in chronic atrial fibrillation have also been definitively shown.

There are still ‘gaps’ in CRT knowledge in addition to CRT benefit for Class I patients. To date, only one trial has been completed in patients with less significant LV dysfunction, BLOCK-HF, but other trials are underway. Despite multiple negative trials assessing the predictive nature of echocardiographic dyssynchrony parameters, are these parameters truly not helpful in selecting appropriate patients for CRT, or have we yet to find the right parameter for dyssynchrony?

The literature is replete with studies regarding left ventricular lead placement, multiple left ventricular leads, LV only resynchronization, imaging to optimize lead placement and responder rate, there is no consensus in any of these areas.

Guidelines exist from multiple professional societies and from multiple countries and they continue to evolve. Although ‘guidelines’ will never be without controversy and never ‘final’, given the evolution of the science, the most frequently quoted guidelines are, for the most part, concordant, and adequately reflect completed randomized clinical trials.

  植込み型デバイス教育・認定制度委員会    
教育講演 デバイス植込みと感染予防
座長 中里 祐二順天堂大学浦安病院 循環器内科
演者 今井 克彦広島大学病院 心臓血管外科
概要

近年、デバイス植え込み症例数の増加に伴い、様々な合併症発生の頻度も増加しつつある。そのなかでも感染症は、高齢者や易感染性の合併疾患を有するデバイス適応例の増加、さらにはICDなど大型デバイス植え込み例の増加に伴い、その頻度も増加している。ひとたび感染がおこれば局所的処置にとどまらず、心内膜炎などによりリード抜去などの手技を余儀なくされることや、まれには重篤な状況に陥ることもある。このような感染を予防するため術者は常に細心の注意を払うべきであり、基本的な手順にもとづいた手技を行うことが肝要である。このセッションではデバイス植え込みによる感染の現状とそれを予防するための、抗生剤使用法、消毒法から手技上の注意点まで包括的な解説をしていただく。

教育講演 デバイス植込み手術の基本手技
座長 栗田 隆志近畿大学医学部 心臓血管センター
演者 岡村 英夫国立循環器病研究センター 心臓血管内科
概要

    ペースメーカをはじめとする心臓電気的デバイス(デバイス)の発展には目を見張るものがある。本体は小型、多機能、長寿命化を実現し、さらには患者の生体情報が自宅にいながら医療関係者に送信される時代になった。その反面、最近の報告によるとデバイス植え込みに関わる合併症の発生率は必ずしも改善しておらず、患者の高齢化、頻回の交換術によりむしろ増加していると言われている。感染症に代表されるデバイス植込みに関わる合併症の予防と対策はきわめて重要であり、私たちにとって永遠のテーマとも言える。
   今回は国立循環器病研究センター不整脈科の岡村英夫先生を講師にお招きし、「デバイス植込み手術の基本手技」というテーマで講演頂く機会を得た。地味なテーマに思えるかもしれないが、基本的な手技を真正面から捉えて学ぶチャンスはそれほど多くはない。新進気鋭の岡村先生による実技伝授は、とくにこれからデバイス植込み手術を学ぼうとする若手医師やコメディカルの方々にとって有意義な1時間になることに間違いない。自己流や直伝の方法のみに染まることなく、もっとも普遍的でかつエビデンスに依拠した植込み法を知る絶好のチャンスである。多数のご参加を期待したい。

教育講演  デバイス植え込みと抗凝固剤マネージメント
座長 石川 利之横浜市立大学医学部 循環器・腎臓内科学
演者 中島 博板橋中央病院 不整脈・心不全科
概要

一昔前には、恒久的な抗凝固療法は、人工弁や冠動脈ステント装着者などごく限られた症例に留まっていた。しかし、昨今の心房細動のよる脳梗塞予防の一大キャンペーンにより、抗凝固療法施行症例は日増しに増加している。デバイス植込みは立派な手術ではあるが、これらの抗凝固療法施行症例に対しての周術期抗凝固マネージメントについては議論の多い部分である。JCS「循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン」をひもといてみれば、ペースメーカ植込み術では大手術に準じた対処が求められており、術前 3 ~ 5 日までのワルファリン中止と半減期の短いヘパリンによる術前の抗凝固療法への変 更が求められている。また、術前 7 ~ 14 日からのアスピリン、チクロピジンおよびクロピドグレルの中止、3日前からのシロスタゾール中止も求められている。この内容は諸外国のガイドラインとも齟齬が無い。しかし、実臨床ではこのガイドラインは遵守されているのであろうか。最近になって、ヘパリンブリッジングについての様々な功罪が議論されてきている。このセッションでは、より臨床的現実的な側面からガイドラインによる周術期の凝固コントロールについて考える。

教育講演 着用型自動除細動器Life Vest
座長 木 雅彦大阪市立大学大学院 循環器病態内科学
演者 庭野 慎一北里大学医学部 循環器内科学
概要

   心室頻拍または心室細動による心臓突然死のリスクが高いが植込み型除細動器(ICD)の適応の可否が未確定の患者、またはICDの適応であるが患者の状態等により直ちにはICDの植え込みを行えない患者を対象として、除細動治療を目的に使用する「着用型自動除細動器(Wearable cardioverter defibrillator [WCD]) Life Vest」がわが国でも2013年7月に薬事承認され、2014年には臨床の現場での利用が可能となる予定である。
   このWCDの使用にあたっては、使用者がWCDについてのセミナーや教育講演を受講していることが必須条件の一つとなる。
   本教育講演では、主に1) WCDの機器としてのシステムについて、2) すでに使用経験のある欧米における適応と臨床成績について、3) WCD使用のためのわが国での施設基準と個人資格について、4) WCD使用におけるわが国での今後の課題についてご講演いただく予定である。

  植込み型デバイス登録・評価委員会    
植込みデバイスの現状と課題  ―日本のデバイス登録データから―
座長 清水 昭彦山口大学大学院医学系研究科 保健学系学域
  三橋 武司 自治医科大学附属さいたま医療センター 循環器科
概要

   1996年、ICDが我が国で保険償還され、突然死に対する強力な予防治療を欧米諸国と同等に行えるようになった。その後、2004年にはCRT-P、2006年にはCRT-Dが保険償還され、現在に至っている。その間、植込みデバイス治療で先行する欧米諸外国にて植込みデバイスのガイドラインが作成され、それらを参考にしてわが国のガイドラインの作成、更新が行われてきた。特に突然死の一次予防目的のガイドラインでは総じて植込みデバイスの植込みを促進する方向でガイドラインの作成が行われてきたが、疾患によっては欧米と我が国とで予後が異なる可能性も指摘されている。一方、CRT-P, CRT-Dは心不全に対する治療も含まれるため当初より一次予防目的の植込みが多い。しかし、我が国においては心不全そのもの予後が欧米より良好であるともされている。その為、欧米のデータを使用して作成されているガイドラインの適性を疑問視する意見もある。
   最近、日本不整脈学会主催のJCDTR、心電学会主催のNIPPON STORMにて我が国においてもデバイスの登録データが集積されてきた。そこで、本セッションでは植込みデバイスの現状を把握するとともに、海外との植込み実態の違い、国内でのデバイス植込みの地域差の問題、植込みデバイスの適応拡大の是非などの課題を考えて行きたい。

  植込み型デバイス関連社会問題対策委員会    
ICD患者の自動車運転制限と改正道路交通法施行
座長 安部 治彦産業医科大学医学部 不整脈先端治療学講座
  渡辺 重行 筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター・水戸協同病院循環器科
概要

   平成25年6月に道路交通法改正法が国会で成立、平成26年度から施行されることが決定した。それに併せ、刑事罰を伴う刑法の改正も国会で審議中である。ICD患者の自動車運転制限の遵守が強く求められ、それに違反し人を死傷させればアルコール飲酒による危険運転致死傷罪とほぼ同じ厳罰(懲役15年以下)が課せられることになる。我々ICD治療を行う不整脈医にとっては、患者指導を行う上で道路交通法の内容を十分理解しておくことが求められる。
   今回のセッションでは、今回の道路交通法改正が行われるまでの経緯と背景、診断書作成上での注意点、今後我々が理解しておくべき点も含めて、それぞれの担当者に解説してもらうのが目的である。ICD患者においても自動車運転は社会生活のみならず日常生活を行う上で必要なものであるが、法に基づいた適切な指導が求められている。

  植込み型デバイス関連安全対策委員会    
デバイス安全対策の実態と問題点
座長 中里 祐二順天堂大学浦安病院 循環器内科
  中島 博板橋中央病院不整脈・心不全科
概要

最近の植え込み型デバイスは本体のみならず、リードにおいても機能面、構造面での進歩は著しく、より臨床的信頼性を高めるべく努力がなされている。様々なストレステストによるデバイス寿命やリード耐久性が試験されているにもかかわらず、実際には、不具合は植込まれて時間が経過しないと判明しない。そして、改良、開発されたはずの技術が逆に不具合を引き起こしていることも事実である。そこでこのセッションでは、デバイス安全対策の実態と問題点についていくつかの観点から掘り下げてみたい。まず本体の不具合については工学的側面からみた原因と対策を、次にリードの不具合ではペーシングリードとICDリードの不具合について最新の調査結果などもまじえて、その実態と問題点にスポットをあてる。さらに、複数リード挿入の必要性や感染などの理由からレーザーシースなどを用いた積極的な遺残リードの抜去が行われるようになっているが、常に安全性が求められる手技でもあるため、その現状と問題点を把握しておく必要がある。最後に看護サイドからみた不具合症例を中心とした社会的・臨床的問題点を指摘いただき、安全対策という観点から総合的なディスカッションができれば幸いである。

  小児植込み型デバイス委員会    
小児に対するデバイス植込みに関する問題点
座長 住友 直方日本大学医学部小児科学系 小児科学分野
  鈴木 嗣敏大阪市立総合医療センター 小児循環器内科
概要

本邦では学校へのAED普及が90%を越え、学校管理下での突然死が減少している。学校管理下の突然死蘇生例は、遺伝性不整脈、肥大型心筋症などが多いことがわかっている。また、複雑先天性心疾患の手術成績が向上し、ほとんどの症例が究明されるようになったこと、小児への心臓移植の適応が拡大され、拡張型心筋症に対するCRT症例も増加していることより、今後小児に対するデバイス植込み例が増加することが予想されている。本シンポジウムでは、小児に対するデバイス植込みに際してどのような問題があるか、今後の展望などについて議論を行う。小児循環器医のみならず、デバイス植込みに携わる外科医、今後の管理に関わる循環器内科医の参加を希望する。

  ディベートセッション    
デバイス植込み患者の身体障害等は変更する必要はない。
座長 松本 万夫埼玉医科大学国際医療センター 心臓内科
pro 中島 博板橋中央病院不整脈・心不全科
con 因田 恭也名古屋大学医学部循環器内科
概要

   ペースメーカ植込み患者は、長く一律に身体障害1級として認定されている。ICDもペースメーカにならって1級とされているが、ここに来てペースメーカについては見直しの動きがある。厚生労働省も今年に入って有識者を集めてワーキンググループを発足し、検討を始めている。
   身体障害者(心臓1級)は、意見書のオ;安静時もしくは身辺の日常生活活動でも心不全症状若しくは狭心症状が起こるもの又は繰り返してアダムスストークス発作が起こるものとなっている。ところが、ほとんどのペースメーカ植込み患者は、植込み後、日常生活に支障がなく、ゴルフや旅行を楽しんでいる人も多い。最大の理由は、デバイスや人工弁などでは、植込み前の状態あるいはデバイスが停止した状態で判断するという決まり事があるからである。この点については、体内埋め込み型デバイスの進歩した今日、装着後の状態で評価しようという動きも出ており、国会でも質疑がなされている。
   本ディベートセッションでは、デバイス植込み患者の身体障害等級を見直しすべきかどうか、厚生労働省ワーキンググループが参考にするようなホットなディベートを期待している。

CRT植込み適応について心電図基準(QRS幅>150msec、CLBBB)が重要である
座長 青沼 和隆筑波大学医学医療系 循環器内科学
pro 庄田 守男東京女子医科大学 循環器内科
con 安藤 献児社会保険小倉記念病院 循環器内科
概要

   21世紀に入り、現在までに行われたCRTランダム化臨床試験において、CRTは左室収縮機能の低下を伴う特定の心不全患者の症状を改善するのみならず、死亡率・再入院率を減少させることが示されてきた。
   しかし,その後CRTが広く実施されるようになると,1/4〜1/3以上の例で、治療改善効果が得られないnonresponderが存在することが判明した。現時点において、CRT-Dの植え込みは高額で、侵襲性も比較的高く、植込みリスクも伴うことから、CRTによってメリットが得られる患者と、得られない患者の厳密な見極めが極めて重要となっている。
   その同定に際し、以前より心電図上の「QRS幅が広い,または左脚ブロック(CLBBB)が認められる」等が検討されており、多くの論文のサブ解析等からQRS幅が約150msecあたりで有効性に大きな隔たりがあることも示されている。
   今回、CRT植込み適応について心電図基準(QRS幅>150msec、CLBBB)が重要であるか否かについてのディベートセッションで、CRTの効果とその植込み適応におけるQRS幅の意義が明白であるか否かという白熱した議論を期待したい。

デバイス遠隔診断は患者のQOLを上げ医療経済も改善させる
座長 伊藤 浩岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 機能制御学講座
pro 真中 哲之東京女子医科大学 循環器内科
con 三橋 武司自治医科大学附属さいたま医療センター 循環器科
概要

デバイスやリード線の情報に加えて生体情報を通信できるデバイスが世に出て久しい。生体情報を積極的に活用して遠隔診療に役立てている施設もあるが、ほとんど活用していない施設の方が多いのが現状である。その理由として、遠隔診療に対する保険診療点数が付いていない、生体情報をどう読んでどう活かしたらよいかわからない、そのための人員確保が困難、などがあげられる。それに対し、デバイスからの生体情報から心不全を発症前に発見できれば、発症を予防し入院コストが削減できるとともに、患者のQOLも維持できる、というメリットも大きい。現時点でデバイスによる遠隔診療はチャレンジングであるが、高齢化社会と地域医療を支える医療資源としてみると、その重要性と可能性は計り知れない。どこをどう解決すればデバイス遠隔診療はより受け入れられやすくなるか、討論を通じて明らかにしていきたい。

心房細動に心不全を合併した症例の最適な治療法は?
座長 木原 康樹広島大学大学院医歯薬保健学研究科病院循環器内科学
Ablate & CRT
演者 百村 伸一自治医科大学附属さいたま医療センター 循環器科
Catheter ablation(PVI)
演者 小林 義典東海大学医学部付属八王子病院 循環器内科
概要

心房細動と心不全(心機能障害)との間には密接な関係があり、しばしば双方相俟って患者のみならずわれわれ医療担当者を困らせます。どちらかといえば心房細動の方が介入しやすいためPVIを念頭に置きがちですが、心機能障害が高度であればCRTなど心室への操作も必要になります。本ディベートにおいては、自治医科大学の百村伸一先生と東海大学の小林義典先生お二人のプロフェッショナルをお招きし、ConとProの立場より討論を交わしていただきます。冬の広島での熱い討論が、ご参加の先生方の様々な臨床現場における治療選択の一助となればと期待しています。

デバイス植込み例は抗凝固剤を服用させるべきである
座長 新 博次日本医科大学附属多摩永山病院 内科・循環器内科
pro 安部 治彦産業医科大学医学部 不整脈先端治療学講座
con 石川 利之横浜市立大学医学部 循環器・腎臓内科学
概要

これまでデバイス植込み症例、特に洞不全症候群では、心室ペーシングに依存しStroke発症頻度が増加することが示されている。しかし、積極的に抗凝固薬を投与すべきかについては不明であり、ガイドラインには“心房細動のないペースメーカ植込み例に対する抗凝固療法”はクラスⅢと否定的である。しかし、最近ワルファリンと比較し出血性合併症発症頻度が少ないとみられる新規経口抗凝固薬(NOAC)が登場した。ワルファリン投与はCHADES2スコアで0ないし1の低リスク例ではその出血性合併症の頻度から使用は薦められていない。しかし低リスクでも出血性合併症の発症頻度がより低率となることが推測されるNOACの登場によりこの部分は改変されるかも知れない。デバイス治療単独によるStroke発症頻度が、使用する経口抗凝固薬の出血性合併症発症頻度より高率であればその使用が薦められる。逆に、Stroke発症率が出血性合併症発症頻度がより低率であれば、心房細動を合併する場合を除き服薬すべきではないことになる。相対する立場からの視線で抗凝固薬の意義を考察して頂きたい。

ICD植込みはsingleコイルがdualコイルより優れている
座長 村川 裕二帝京大学医学部附属溝口病院 第四内科
pro 副島 京子杏林大学医学部循環器内科
con 池田 隆徳東邦大学医学部内科学講座 循環器内科学分野
概要

   ICDの臨床応用にあたって、さまざまなリードシステムと通電パルスが提案されて来た。通電のポラリティーを変えるものから、二相性パルスの形や電極の配置など広範な知見が蓄積された。技術工学的進化と、治療手技としての簡便さの間に、いかにバランスを取るかは、ひとつの洗練である。
   症例ごとに病態の多様性があり、例外的な治療困難例に如何に備えるか、トラブルの頻度はどうか、あるいは電極抜去の難易はどうか、比較する項目の重み付けもあり、システムごとの価値を比較することは容易でない。臨床医がどのくらいsingleコイルとdualコイルを選択するかを比べれば、トレンドを知ることは出来る。今回のディベートでは、トレンドの背景となる治療選択のロジックや現場感覚に、トレンドを越えたフィロソフィーや好みも交えておふたりの先生のご意見を拝聴したい。

  シンポジウム    
医療者と患者の関係を考える
座長 三田村 秀雄立川病院 循環器センター
演者 樗木 晶子九州大学医学部 保健学部門
概要

   昨今の週刊誌などマスコミおいて“日本の病院ベスト〜”と題した記事が目立つ。 内容は施設ごともしくは医師の年間手術数や検査数を競うものであることが多い。また、医療者には病院経営の観点からなるべく多くの症例をこなし、営業手腕を追求することが求められてもいる。一方、医療者も自分の専門分野に専念するあまり、自分の興味外のことについては関心を持たずに、患者さんのもつ本来の疾患を看過ごすことも多くみられる。専門分野のことが責任をもって行われるのであればまだ良いが、ともすると十分な専門的治療さえも行われないこともある。単に、専門的かつ機械的に患者さんをこなす医療となっていることもあるかもしれない。また、患者さんによかれと思って普段に行っていることが実はかえって患者さんを不幸にしている危険性もある。我々は医療者として、常に患者さんを中心としてみずから行っている医療を見直す必要があるように思われる。
   本シンポジウムでは、まずデバイス患者さんの外来における管理の実情として最近行われた患者さんに対するアンケートの結果を発表していただく。さらに、各医療者の立場から実際の経験や実情を3人の演者からご発表いただき、全部で4人の演者を迎え、本邦におけるデバイス医療における医療者と患者の関係の実態を明らかとし、よりよいデバイス患者さんの管理のためにはどのようにしたらよいのかを模索する。PACE is PEACEはなされているのか? 実際には何が欠けていて何が必要か? 会員の皆様と考えてみたい。

  解剖    
デバイス植込みに伴う合併症を避けるために必要な解剖
座長 新田 隆日本医科大学 心臓血管外科
演者 井川 修日本医科大学多摩永山病院 内科・循環器内科
概要

   リード挿入経路の解剖を詳細に見ていくと、デバイス植込みにあたってその経路ばかりでなく周辺構造にも多くの注意点が存在することに気づく。さらに、我々が日常診療において、なにげなく進めてきた処置の中にも意外な構造的ピットフォールがあることに驚く。
   その心臓・大血管および周辺構造を正確に見ることは、安全で、確実なデバイス植込みを可能とするばかりでなく、想定されるさまざまな合併症、これまで報告されてきた合併症の機序までも理解を可能とする。
   ときに、我々の中にある正常構造のイメージには誤りがあるかもしれない。一口に正常構造と言っても、正常構造のvariationもあれば、完全なanomalyもある。術者として持つべき情報は多い。テキストに記載されている程に当たり前の構造の中に、気づかれていない数多くの心臓内部構造あるいは周辺構造があることも押さえておきたい。
   本セッションでは静脈穿刺部位に始まりその周辺胸郭構造、リード挿入経路と周辺縦隔構造、末梢静脈、上大静脈、右房および右室構造を再確認し、その構造の中に潜むリード挿入操作・留置にあたってのピットフォールを解剖学的に考える。

【本セッションのテーマ】
① 静脈穿刺部位のピットフォール
② リード挿入静脈経路、周辺構造の特殊性について
③ 末梢静脈・上大静脈およびその周辺構造の特殊性について
④ リード操作・留置時、考慮すべき右房構造の特殊性
⑤ リード挿入・留置時、考慮すべき右室構造の特殊性

  CDR・IBHRE認定制度委員会    
JHRS-CDRジョイントセッション
座長 野上 昭彦筑波大学 医学医療系循環器不整脈学講座
  石川 利之横浜市立大学医学部 循環器・腎臓内科学
概要

デバイスの設定、デバイスから得られる情報はデバイス治療の基礎である。CDRは複雑化したデバイス機能の専門家である。そのため、デバイス治療の臨床現場におけるCDRの役割は増大している。一方、デバイスの適切な管理は症例毎に異なっており、デバイスだけを見ていたのでは不十分である。従って、医師とCDRの協力が重要である。本セッションではCDRサイドより症例を提示して、その問題点と解決方法をCDRと医師の間で討論する。その結果、医師とCDRのより良い協力関係が構築されることを願っている。それには、多くのCDRとデバイス治療に関与している多くの医師の参加が不可欠である。そして、フロアからも討議への積極的な参加を期待している。

  健康保険委員会    
パネルディスカッション 「新医療用具が本邦の医療現場に現れるまで」その現状と問題
座長 小林 洋一昭和大学医学部 循環器内科
  松本 万夫埼玉医科大学国際医療センター 心臓内科
概要

   昨今の行政当局のご努力で、内外におけるデバイスラグは解消してきているようにみえる。しかし、必ずしも現状で十分とも思えません。実際のところデバイスの新規導入に関する本邦における実情は、我々デバイス植え込みに関連する医師、臨床工学士、看護師、さらには患者さんも興味はあるものの十分に理解されているとは思えません。まずはデバイスラグの現状やデバイスが本邦で使用できるまでの過程や、それらのシステムを理解する必要があると思います。本セッションでは、これらの現状を正しく認識した上で、我々は次にどのようになすべきなのかを考察したいと思います。このたび、幸いにもデバイスにかかわる各方面の識者にご講演を賜ることになりました。このような機会はまれであり、なるべく多くの皆様にご来場をいただき不整脈学会がデバイスの保健診療制度において今後どのような活動をすべきか一緒に考えていただく場となれば幸いです。

  研究奨励委員会    
ミロスキー博士記念フェローシップ・プログラム報告会2013

共催:ボストン・サイエンティフィック ジャパン㈱

【総合司会】 松本 万夫埼玉医科大学国際医療センター 心臓内科
【開会挨拶】 奥村 謙弘前大学大学院医学研究科 循環呼吸腎臓内科学
Session1:フェロー報告
座長 堀江 稔滋賀医科大学 呼吸循環器内科
Session2::Lecture of Memory of David Cannon  除細動の基礎的理論と実際
座長 住吉 正孝順天堂大学医学部附属練馬病院 循環器内科
演者 野呂 眞人東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科
【閉会挨拶】 堀江 稔滋賀医科大学 呼吸循環器内科
概要

   ミロスキー博士記念フェローシップ・プログラムは前身の顕彰委員会から引き継ぎ、1992年から行われてきた日本不整脈学会研究奨励委員会事業の一つです。現在まで53名の会員が本フェローシップ・プログラムの恩恵を受けています。その貢献度は多大なものがあると想像されます。しかしながら、いままで本プログラムの成果を発表する場がありませんでした。そこで、第6回日本不整脈学会植込みデバイス関連冬季大会開催の機会に日本不整脈学会研究奨励委員会として、本企画をおこなうこととなりました。
   本フェローシップ・プログラムに参加した先生方の経験、その後の発展などの報告と、内外の著名な講師による最新または重要なICD に関連した事項に関する講演により、本フェローシップの存在をより多くの会員に知っていただき、より多くの研究者の応募を募り、本分野のさらなる発展を期待するものです。多くの皆様のご来場をお待ちしています。

共催:ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社

  コメディカルセッション    
デバイス管理 コメデイカルのかかわりの実情と問題、そして今後の展望
座長 大木 康則埼玉医科大学国際医療センター MEサービス部
  梅津 努筑波大学附属病院 看護部
概要

   2008年4月から医療機器公正取引協議会が自主規制として実施された「医療機関等における医療機器の立ち会いに関する基準」によってメーカによるデバイス業務の立ち会いが規制され、現在各施設ではこれらの業務をコメディカルが代わって行うようになってきていると思われます。しかし、実際には不整脈業務に専念できるコメディカルが少ないことや、デバイスが日々進歩し新たな機能の導入等により複雑化が進んでいるため、人員育成も困難であるという問題を抱えていることも現状です。
   そこで既にコメディカルがデバイス管理を積極的に施行されている施設から、どのようにデバイス管理・人材育成を実施してきたか、また患者中心のデバイス管理業務のためにどのようにコメディカルが関与すべきかを模索するために企画致しました。コメディカルのみならず、指導的立場の医師をはじめとして各職種の皆様のご来場をおまちしています。

  公開講座    
PACE is PEACE となるために!
第1部:デバイスと患者さん ―患者として知るべきその管理について―
座長 比江嶋 一昌国家公務員共済組合連合会 九段坂病院内科
  早川 弘一四谷メディカルキューブ
1-1 PM/ICDの基本的原理と管理(患者さんが知っておきたいデバイスの管理)
演者 中村 俊博国立病院機構九州医療センター 循環器科
1-2 デバイス植込み後の患者さん(社会復帰と心の問題)
演者 樗木 晶子九州大学医学部 保健学部門
第2部:デバイスと患者さん ―患者として知りたいこと―
座長 小坂井 嘉夫千里中央病院 循環器科・心臓外科
  末田 泰二郎広島大学大学院医歯薬学総合研究科 病態制御医科学講座外科学
2-1  ペースメーカー友の会 Q&A 植込み患者からの質問・考察
演者 日高 進日本心臓ペースメーカー友の会
2-2  ペースメーカー植込みは寿命は?
演者 須磨 幸蔵東京女子医科大学(日本心臓ペースメーカー友の会)
第3部:ICDを植込んだ患者さんの自動車運転制限と改正道路交通法施行
座長 杉 薫東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科
演者 渡辺 重行筑波大学附属病院 水戸地域医療教育センター・水戸協同病院循環器科