会長

   植込みデバイス治療は、植込まれた機器を最適に設定しつつ薬物療法などと併用することによって大きな治療効果を得ようとする治療であります。日本不整脈学会植込みデバイス関連冬季大会はデバイス治療に特化した会議として2009年に第1回が開催されました。以来、参加者は回を重ねるごとに増加しており、昨年の第4回大会(安部治彦会長)は北九州市小倉という地方都市の開催でありながら第3回を上回る1200名以上が参加しました。

   第5回という節目の大会である本大会のテーマにはデバイス治療の多面性を取り上げました。植込みデバイス治療は1950年台後期にペースメーカ治療としてその歩みを始めました。すでに半世紀以上が経過した現在、植込みデバイス治療は徐脈のみならず頻脈や心不全にまでその治療領域が及んでいます。治療領域が拡大するにつれて、その相互が重複する治療領域の見定め、最適なデバイス選択やデバイス設定が不可欠です。しかし領域の複合する病態にはどのデバイスが最適であるかは、病態をどのように把握するかによって大きく変化します。CRT-PとCRT-Dの選択はその1例です。ペーシング部位の問題もいまだに解決されない問題です。これらはデバイス治療が直面している諸問題の一端に過ぎず、どの角度から眺めるかによって全く異なった結論が引き出される可能性もあれば、見方によっては全く矛盾する結果が得られる可能性もあります。本大会では、このような解決していない問題を様々な方向から眺められるようにディベートセッションを企画しました。また、治療に不可欠なデバイス設定については、基礎から理解できるような教育セッションを設けております。本大会で継続的に議論されている合併症、そのトラブルシューティングや予防策についてのセッションも設けております。さらに本大会では、標準的な植え込み手技ではデバイスを植え込めない症例を複雑手技症例として分けて論じられるようにワークショップを設けました。これらのセッションは、経験の少ない参加者にとっても貴重な経験を共有できるよい機会と考えております。医師のみならず看護師、技師、CDR、さらにはメーカーの参加者が全てのセッションで議論に加わっていただくことで、デバイス治療をより多くの角度から眺め直すことが本大会の狙いです。来る第5回大会は議論が沸騰する熱い大会であって欲しいと願っております。皆様奮っての御参加を期待いたします。

   最後になりましたが、参加者の皆様に会場移動のご不便をおかけすることをお伝えせねばなりません。これは、一橋会館が多くの参加者を収容するには手狭となってしまったことです。この点を改善するために隣接する如水会館にも会場を設けましたが、移動のご不便をおかけすることになります。この難局はプログラム編成の工夫で乗り越える所存ですが、ご不便をおかけすることに対してあらかじめお詫び申し上げます。

日本不整脈学会第5回植込みデバイス関連冬季大会
会 長 中 島  博
(板橋中央総合病院循環器科 不整脈・心不全診療部長)