この度、第3回植込みデバイス関連冬季大会を開催させて頂くことになりました。

   植込みデバイスによる心臓治療は、徐脈治療から始まり、その後、頻脈治療そして心不全の治療まで、適用範囲が拡大され、年々のデバイス植込み症例数も未だに留まる気配を見せていません。これは植込みデバイスによる治療では、心リズムや心筋の収縮タイミングを安定して制御でき、高度な治療効果を得やすく、しかも治療効果の判定も容易であることを物語っているといえます。

   しかし、これらの発展の陰では、各デバイスの機能の融合による機能そのものの複雑化、および適合拡大に伴う電極留置操作の難易度の増加が進んでおり、不具合につながる要因も増加しつつあります。デバイスが持っている効能を最大限に引き出せるようにするための根幹をなす要件は、いかに不具合発生を排除するかにかかっているといえます。また従来、各デバイスメーカーに多分に依存していた患者管理も、昨今では医療機関自身で実施することを求められる社会情勢となってきています。

   これらの状況の中で、デバイスの効能効果の限界、あるいはその拡大の可能性等についての議論は、本学会の学術大会で活発になされており、これはデバイス治療の更なる発展に不可欠のものであります。しかし、デバイスの不具合の原因になりうる、デバイスの性質については、教科書あるいは個々のデバイスのマニュアルを読めば即理解できるというものでないものがあります。またこれらについての知識は日常診療の経験から得られるものでもないことが歯がゆさを感じさせます。そして現実に、これらの知識が浸透していれば、避けられたと思われる不具合の実例が少なからず発生しています。

   先に述べた、デバイス本来の効能を最大限に引き出すための根幹的要件である、不具合発生の排除を実現するには、その原因となりかねない、しかし、治療の観点からはあまり必要性が感じられないようなデバイスの性質について、知る機会を得たものが情報を発信し、その潜在的な危険性について注意を喚起し、議論、情報交換ができる場が必要と提案し続けてまいりました。まさに本冬季大会は、その存在意義の一角に、これを実現しうる場であることを含めて発足したものです。

   このため、本大会では、先行の大会長が案出し、好評を博した企画に加え、デバイスの効能を最大限引き出すために不可欠な、不具合回避のために必要な情報を、より多く発信できる大会になるよう計画を進めております。デバイス患者を診療される医師の先生方はもとより、平素の患者管理を分担される立場にあるコメディカルの皆様方、そして各デバイスとともに、それらに関する広範な情報を発信されているCDRの方々にも、活発に議論していただける場としたいと考えておりますので、これらの皆様方のご協力をお願いしつつ、ご挨拶とさせて頂きます。

第3回植込みデバイス関連冬季大会
会長  豊島 健
日本不整脈学会理事
(日本メドトロニック株式会社)