心電図クイズ

〜 2010年8月 第2回 〜井上 博(富山大学大学院医学薬学研究部内科学第二)

Q.37歳の女性。労作時の呼吸困難と心雑音の精査のため来院した。
心電図診断はどれか。すべて選びなさい。


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  • a. 右房負荷
  • b. 左房負荷
  • c. 右室肥大
  • d. 左室肥大
  • e. 高位後壁梗塞
解答と解説(クリックで開きます)

【解答】
a. 右房負荷、c. 右室肥大

【解説】
主要心電図所見
  • 1)高く、尖ったP波をⅡ、Ⅲ、aVF、V2〜5に認める。
  • 2)右軸偏位(約+120°)
  • 3) V1〜2のR波高の増大(>0.7mV)、V1のR/S比≒1
  • 4) V5〜6の深いS波
  • 5) V1〜3のST・T変化

右房負荷(下壁誘導のP波は肺性P波、右側胸部誘導のP波は右心性P波の所見)、右軸偏位、V1〜2のR波の増高、V5〜6の深いS波、V1〜3のST・T変化から、右室肥大と診断できる。本例は末梢性肺動脈狭窄により肺高血圧をきたしていた。V1で高いR波を見た場合は、①正常亜型、②右室肥大、③高位後壁梗塞の3者が鑑別の対象となる。右房負荷を示唆するP波変化、右軸偏位、右側胸部誘導のST・T変化、V5〜6の深いS波などを伴えば、右室肥大の診断は容易である。高位後壁梗塞は、V1の高いR波(後壁のQ波の鏡像変化)のほかに陽性T波(後壁の冠性T波の鏡像変化)が特徴で、多くの場合、側壁梗塞または下壁梗塞の所見を合併する。正常亜型は、ほかの可能性を除外したうえで診断する。