〜 2010年8月 第1回 〜井上 博(富山大学大学院医学薬学研究部内科学第二)
Q.61歳の女性。労作時の呼吸困難を認めていたが、最近になって安静時にも呼吸困難が出現してきたため来院した。心電図診断はどれか。1つ選びなさい。
Q.61歳の女性。労作時の呼吸困難を認めていたが、最近になって安静時にも呼吸困難が出現してきたため来院した。心電図診断はどれか。1つ選びなさい。
心電図を見る(別ウィンドウ)
【解答】
b. 低電位差
【解説】
主要心電図所見
QRS波高(R波の頂点からS波の頂点まで)が、四肢誘導全てで0.5mV以下となっている場合、あるいは胸部誘導全てで1mV以下になっている場合、低電位差という。体表面に置いた電極で記録される電位が小さくなるのは、①心臓の重篤な障害、②心臓と電極が離れている場合、③心臓と電極の間に導電率の高い物質(例えば水分)が存在する場合などに見られる。本例は、悪性胸腺腫の浸潤により大量心嚢液貯留をきたしたもので、これがほぼ全誘導に見られる低電位差の原因と考えられた。右側の胸部誘導で見られる陰性T波の意義は明らかではない。心膜炎の晩期所見では、陰性T波はもう少し広範囲にみられてもよさそうである。なお四肢誘導の低電位差を見た場合は、心嚢液貯留以外に全身の浮腫性疾患の可能性も念頭に置くとよい。