心電図クイズ

〜 2010年6月 第2回 〜山科 章(東京医科大学第二内科)

Q.84歳の男性。肥大型心筋症、高血圧症で定期的に受診している。定期受診時にとられた記録。自覚症状に特記すべきものはない。この心電図にみられる所見として、該当するものを全て選びなさい。


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  • a. 第一度房室ブロック
  • b. 心房期外収縮
  • c. 心室調律
  • d. 房室解離
  • e. 右脚ブロック
解答と解説(クリックで開きます)

【解答】
a. 第一度房室ブロック
b. 心房期外収縮
c. 心室調律
d. 房室解離

【解説】
主要心電図所見
  • 1)最初の2拍のP波の形は一定であるが、PQ時間は0.30秒と延長している。第1度房室ブロックがある。
  • 2)3拍目は予定より早期に出現し、T波の終末部に重なる先行するP波(Ⅲ、aVFで陰性)を認める。QRS波形は洞調律時と同じであり、心房期外収縮と判断できる。
  • 3)4拍目のQRS波は洞調律時のQRS波形と大きく異なり、QRS電気軸も移行帯も不定で、以後、毎分63程度の頻度で一定の間隔で出現している。先行するP波はなく、心室調律と診断できる。良く見ると、5拍目のQRS波に重なるように直前に洞調律のP波と同じ波形を認め、6拍目、7拍目のQRS波にも重なるP波をわずかながら認める。通常、心室固有調律は毎分30台程度であるが、なんらかの原因で本症例のように心室調律が速くなり60台前半で出現すると、洞調律と競合するようになる。洞調律と競合するため洞調律が心室に伝導される前に心室調律が出現しているため、房室解離となっている。こういった現象を等頻度房室解離と呼ぶこともある。