心電図クイズ

〜 2010年5月 第2回 〜櫻田 春水(都立広尾病院循環器科)

Q.39歳、男性。1週間前に失神発作あり。昨晩、夜間に呻き声をあげているところを家人に指摘されたため受診。受診時に特に自覚症状はない。来院時の12誘導心電図を示す。診断は?


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  • a. 異型狭心症
  • b. WPW症候群
  • c. 急性心筋梗塞
  • d. ブルガダ症候群
  • e. QT延長症候群
解答と解説(クリックで開きます)

【解答】
d. ブルガダ症候群

【解説】
主要心電図所見
  • 1)洞調律、心拍数 60回/分
  • 2)V1、V2のcoved型ST上昇、V3のsaddleback型ST上昇

不完全右脚ブロック様のQRS波形にみえるが、これはブルガダ症候群に特徴的なV1〜V2誘導のcoved型、V3誘導のsaddleback型ST上昇によるものである。ブルガダ症候群はこのような右側胸部誘導のST上昇を特徴とし、心室細動から突然死することがある疾患である。本症例での失神や夜間の呻き声の発作は心室性不整脈の存在を強く疑わせる病歴である。虚血性心疾患を疑う胸部症状はなく、心筋梗塞、狭心症は否定的である。QT時間は正常範囲内である。PQ時間は正常であり、QRS初期成分にデルタ波はなくWPW症候群ではない。本症例は突然死の家族歴を有しており、植込み型除細動器(ICD)の適応と判断された。