心電図クイズ

〜 2009年11月 第1回 〜井上 博(富山大学大学院医学薬学研究部内科学第二)

Q.35歳の女性。入院の5日前に39度台の発熱があり、近医から感冒薬と抗生物質を処方された。
その後徐々に心窩部痛、嘔気、全身倦怠感が出現した。入院当日、往診時に収縮期血圧が80〜70mmHg台に低下していたため、搬送された。
心電図より本例の診断は?

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  • a.心膜炎
  • b. 心筋炎
  • c. 異型狭心症
  • d. 急性心筋梗塞
  • e. 陳旧性心筋梗塞
解答と解説(クリックで開きます)

【解答】
b. 心筋炎

【解説】
主要心電図所見
  • 1)低電位差(肢誘導、胸部誘導とも)
  • 2)右脚ブロック
  • 3)V1〜V4の異常Q波
    (V2〜V3では小さなr波が見えるが、通常の右脚ブロックとしては明らかに異常)
  • 4)Ⅰ、aVL、V1〜V6のST上昇
  • 5)陰性T波(Ⅱ、Ⅲ、aVF、V1〜V2)

胸部症状を伴うST上昇の鑑別診断には、異型狭心症、心筋梗塞、心膜炎、心筋炎が含まれる。先行感染がある場合には心膜炎、心筋炎の可能性が高い。Ⅱ、Ⅲ、aVFにST上昇のない点、異常Q波の存在、ST上昇の形状(上方に凸)が、心膜炎としては合わない。伝導障害や低電位差、循環動態の障害の存在は心筋炎に矛盾しない。心筋梗塞の場合にも発熱を見るが、梗塞発症後2〜3日にみられる。入院時のCKは1615、CK-MBは175であり、2週後に行われた冠動脈造影では狭窄病変なく、心筋生検で急性心筋炎と診断された。