心電図クイズ

〜 2009年10月 第1回 〜井上 博(富山大学大学院医学薬学研究部内科学第二)

Q.56歳の男性。仕事中に前胸部の締め付けられる痛みが出現し、様子を見ていたが軽快しないため来院した。
心電図診断はどれか。該当するものを全て選びなさい。

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  • a. 狭心症
  • b. 前壁梗塞
  • c. 下壁梗塞
  • d. 左室肥大
  • e. 左脚ブロック
解答と解説(クリックで開きます)

【解答】
c. 下壁梗塞  e. 左脚ブロック

【解説】
主要心電図所見
  • 1) QRS幅延長。Ⅰ、aVL、V5〜6のQRS波形がM型
  • 2) Ⅰ、aVL、V5〜6のST・T変化
  • 3) Ⅱ、Ⅲ、aVFのST上昇(上方に凸)

左脚ブロックがあると、左室内の興奮伝播過程が正常と異なるので、左室に関する様々な診断基準の適用が不可能になり、左室肥大や心筋梗塞の診断が困難になる。しかし、急性心筋梗塞による一次性ST・T変化は、脚ブロックによる二次性ST・T変化を凌駕しうるので、この急性期の変化に注目すれば左脚ブロックの存在下であっても、急性心筋梗塞の診断は可能である。本例では緊急冠動脈カテーテル検査を行った結果、右冠動脈近位部に完全閉塞が認められた。