臨床心電図解析の実際 - 不整脈編 第3章
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第3章 心房性不整脈ECG A030(Ⅱ、Ⅲ誘導の一部を拡大)P波は↓に示すように約200/分の高頻度で出現し、心房頻拍を呈している。房室伝導は①、②、③のように3対2伝導のWenckebach周期を示し、A028と同様であるが、QRS波の形が交互に異なっている点が大きく違う。短周期(A)で出現したQRS波は強い左軸偏位をきたし、長周期(B)の後は正常軸を示している。すなわち、この1拍ごとの軸偏位がQRS形態の交互変化をもたらしていると分かる。短周期で出現する左軸偏位が長周期で消失する機序としては、短周期では房室結節から左脚前枝に到達した興奮が不応期に遭遇してブロックされるのに対し、1拍の房室ブロックの後に長い周期で到達したときには左脚前枝がすでに不応期を脱しているため、興奮が通過すると考えれば説明可能である。いずれにしてもまれな現象である。  164

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