臨床心電図解析の実際 - 不整脈編 第1章・第2章
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はじめに 医学生や研修医の人たちから、不整脈心電図を読む際の「コツ」は何ですかとよく尋ねられる。またこれだけ読めばすべて分かる、というような魅力的なタイトルを冠した心電図参考書が世の中に数多く出回っているのをよくみかける。心電図を正確に読みたい、と多くの医療従事者が切望しているにもかかわらず、なかなか思うようにいかず苦労しているのであろう実情がうかがわれる。 確かに、複雑な不整脈の解析などに際して、ポイントになる所見を見つけることができれば早く診断に結びつけられる可能性がある。しかし、やはり基本は①心拍のリズム、②PQRSTの出現順序、③波形の変化、④出現のタイミング、⑤波形同士の間隔、⑥周期性の有無に関して、一つずつ丁寧にかつ系統的に確認することに尽きる。「ローマは一日にして成らず」である。 こうした基本的解析を毎回しっかりと繰り返していくうちに、徐々に自分にあった解析方法が身についてくる。これがコツといえばコツであるが、それぞれ個人差がありどれがよいとは一概にはいえない。できるだけ多くの心電図に触れることが自分なりのコツをつかむ早道である。ランニングに例えれば、走り始めは苦しくても無酸素閾値を過ぎると急に楽に走れるようになる。苦しさを乗り越えた先のランニングが楽しくなるように、心電図も繰り返し判読を行う地道な努力を続けることで、ある時点から読むのが楽しくなる。 この「臨床心電図解析の実際―どこをどう見るか―」(不整脈編)では、40年間の臨床現場で遭遇した実際の不整脈心電図について、私なりの解析の仕方をそれぞれ解説している。日常ごく一般的に目にするものからめったにお目にかからない珍しい不整脈やいまだによくわからない心電図まで、様々なタイプの心電図があるので興味深いものがみつかるのではないだろうか? 皆様が、ここに示されている所見や解析プロセスを参考に自分なりの解析・解釈を楽しみ、心電図が好きになっていただけることを願っている。平成25年4月加藤貴雄

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