臨床心電図解析の実際 - 複雑な心電図の解析編
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88複雑な心電図の解析編ブロック-9 AnswerV1V2ⅠⅡ完全右脚ブロックで、RR間隔が不整であることから、一見心房細動のようであるが、V1、V2誘導あたりでは明らかにP波と思われる波形が観察される()。ブロック-4で示した心房粗動の例に類似しているが、伝導比は不定で規則的なリズムはなさそうである。V1心房房室結節心室××××××?R1R2R3R4R5R6R7E1E2E3E4E5E6E7E8E9E10E11E12E13P波の明瞭なV1誘導を拡大し、伝導の様子をラダーダイアグラムで検討してみる。心房興奮間隔は400msec(150/分)で、幅の狭い尖鋭P波を呈していることから異所性心房頻拍と判断される。順次房室間の伝導をみると、R1-R2間には心房興奮がE1、E2、E3の三つがあり、E1、E2は連続してブロックされE3がR2へと伝導していることから、ここは3対1伝導の高度房室ブロック(advanced AV block)と判断される。次にE4およびE6はブロックされ、E5、E7がそれぞれR3、R4に伝導しており、この間は2対1房室ブロックと考えられる。そのあとE8はR5へ、E9はR6へと伝導しているが、その伝導時間は徐々に延長し、E10はついにブロックされ、E11で再びR7に伝導が回復している様子が読み取れる。すなわち、この間は4対3伝導のWenckebach周期を伴うMobitzⅠ型第2度房室ブロックと診断される。すなわち、心房頻拍でかつ短時間のうちに伝導様式が目まぐるしく変化する、不安定な房室ブロックを伴うPAT with blockの状態と考えられる。

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