臨床心電図解析の実際 - 複雑な心電図の解析編
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62複雑な心電図の解析編頻拍・頻脈-8 AnswerR1R2R3R4R5R6R7R8R9R10ⅠⅡⅢV1V2V3PP間隔は約560msec()、RR間隔はおよそ1000msec()で、ともにほぼ一定であるが、両者間に関連性はなく、房室解離の状態、すなわち完全房室ブロックと判断される。しかしよくみると、R2-R3間隔だけが960msecとやや短く()、かつR3の波形はほかのQRS波と異なり、左軸偏位型を呈していることがわかる()。この心拍をどのように考えたらよいであろうか。R1R2R3R4R5R6R7R8R9R10RR1RR2RR3RR4RR5RR6RR7RR8RR90100200300400500600700800900100001002003004005006007008009001000P1P2P3P4P5P6ABPR間隔 (msec)RP間隔 (msec)V3ⅢP波が認識しやすい誘導として連続するⅢおよびV3誘導を切り出し、認識できるすべてのP波()、R波を抽出し、RR1からRR9についてRP時間とその次のR波までのPR時間をそれぞれR1P1;P1R2、R1P2;P2R2のように順次計測する。これを、縦軸にPR間隔、横軸にRP間隔を取ってプロットすると、上図のようになる。グラフで明らかなように、ほとんどの点は完全房室解離に伴う補充調律でRR間隔が一定であるために直線状に並ぶが、A、Bの2点だけが直線よりやや下方にプロットされていることがわかる()。AはR2P3;P3R3のプロット、BはR2P4;P4R3のプロットで、RR2()の解析から得られたものである。RR2がほかより短く、R3の波形がほかと異なっている点を考えると、完全房室解離の最中にP4のみが房室結節を正常のスピードで通過し、心室に伝導してR3を形成したと判断することができる。虚血性心疾患の急性期に現れた所見で、本例ではその後、虚血の改善に伴って伝導が回復し、房室ブロックが解消した。このような所見は、伝導回復の可能性があることを示唆するものかもしれない。

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