臨床心電図解析の実際 - 複雑な心電図の解析編
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56複雑な心電図の解析編頻拍・頻脈-5 AnswerV1V2V3Ⅰ25mm/secⅡⅢ心拍数はちょうど100/分で、QRS波は幅広く右脚ブロック型を呈し()、RR間隔は一定()である。心房房室結節心室V1V2V1、V2誘導の一部を拡大してみると、P波はQRS波に重なって判読しにくいものもあるが()、PP間隔240msec、約250/分の高頻度で規則的に興奮しているようで、心房粗動もしくは心房頻拍の状態と判断される。一方、QRS波はRR間隔600msec、100/分でやはり規則的に出現している()。このQRS波が心房から伝導した興奮によってもたらされているとすれば、伝導比5対2の心房粗動もしくは心房頻拍ということになるが、そのような複雑な伝導様式が正確に繰り返されることはありうるのだろうか。むしろ、この場合のQRS波は下位中枢の自動能亢進によってもたらされた房室接合部頻拍あるいは心室頻拍と考えるほうが自然ではないだろうか。すなわち、心房と房室接合部(あるいは心室)がそれぞれ独立した頻拍を呈している二重頻拍(double tachycardia)で、偶然P波とQRS波の関係が規則的にみえると考えるべきかもしれない。

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