臨床心電図解析の実際 - 複雑な心電図の解析編
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54複雑な心電図の解析編頻拍・頻脈-4 Answer心房房室結節心室洞結節R1R2R3R1R2R3A1A2A3A4A5A6A7A8A9E1E2E3E4E5E6E7E8E9心房房室結節心室洞結節R1R2R3A1A2A3A4A5A6A7A8A9E1E2E3E4E5E6E7E8E9ⅠⅡⅢⅠ~Ⅲ誘導をみると、一連の記録のなかで、R1、R2、R3の3拍のみが先行RR間隔が短く、ほかの心拍と形が異なっていることに気がつく。この3心拍を除いてP波とQRS波とはほぼ無関係に出現しており、基本的にはPP間隔が1200msec程度の洞徐脈に伴って、房室接合部からの補充調律を呈する等頻度房室解離(isofrequent AV dissociation)の状態のようである(上段ラダーダイヤグラム)。このR1、R2、R3の機序をどのように解析したらよいのであろうか。まず、E1からE9は房室接合部由来の補充収縮と考えられ、下段ダイヤグラムの房室結節部の影()で示すように一定時間の不応期を残す。洞結節由来の心房興奮A2、A3、A4およびA6、A7、A8は、房室結節においてこの不応期に遭遇するため、心室に伝導することができず、P波のみで終了してしまう。これに対しA1、A5、A9では、興奮が房室結節に到達した際にはすでに不応期が終了しており、興奮は房室結節を経て心室まで伝導し、それぞれR1、R2、R3の正常QRS波を形成することができると考えられる。すなわち、一種の心室捕捉(ventricular capture)と判断される現象であろう。

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