臨床心電図解析の実際 - 複雑な心電図の解析編
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46複雑な心電図の解析編頻拍・頻脈-1 AnswerAⅠⅡⅢV1V2V3V4心拍数155/分前後の規則的な頻拍で、Ⅱ、Ⅲ誘導でP波が陰性()、QRS波は正常型で、RP間隔>PR間隔であることから“long RP’ atrial tachycardia”と診断される。これのみであればさほど珍しい所見ではないが、A()で示した心拍のみがP波の形が大きく異なっていることに気がつく。洞結節心房房室結節心室ABCABCⅡP波形を強調するため、Ⅱ誘導の一部を縦横に拡大した。別途Ⅱ誘導を長めに記録したところ、A、B、Cで示すように、洞性P波と思われる陽性P波が3心拍記録された()。心房頻拍中に洞性P波が時折出現する心房捕捉(atrial capture)と呼ばれる現象の可能性が高い。下段のラダーダイアグラムに示すように、心房頻拍中には逆行性心房興奮()によって洞結節も興奮させられているが()、たまたま不応期にかからないタイミングで出現したA、B、Cの洞結節興奮が順行性に心房を興奮させ、洞性P波を形成した()と考えれば、説明がつく。珍しい現象である。

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