臨床心電図解析の実際 - 複雑な心電図の解析編
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38複雑な心電図の解析編異所性収縮-7 AnswerAAABBBBBⅠⅡⅠ、Ⅱ誘導をみると、4拍目から突然RR間隔が延長し、9拍目で元に戻っている。一見、洞房ブロックか洞不整脈にみえるが、RR間隔は短いA()と長いB()の2種類でそれぞれ一定であり、BはAの2倍より短い。すなわち、洞房ブロックと洞不整脈は否定的である。心房房室結節心室洞結節aabbbAAAABBEEE×××CCⅡⅢⅡ、Ⅲ誘導の一部を拡大してT波の形を注意深く観察すると、a()は上行脚が下行脚よりやや長い不等辺三角形で一峰性を示しているのに対し、b()ではT波の立ち上がりが急峻でかつ二峰性であることに気がつく。すなわち、T波の上行脚に何らかの別の成分が重畳していると考えられる。ラダーダイアグラムで解析してみると、bのT波にはE()で示す非伝導性心房期外収縮が重なっていると判断される。なお、心房期外収縮(E)()によって洞結節が逆行性に興奮し、そこから新たな洞周期(A)()が始まると考えられることから、図のように心房期外収縮の始まりから次のP波の始まりまでの時間をC()とすると、(C-A)/2の式で得られる時間は洞結節の興奮が心房に伝導する時間、すなわち、おおよその洞房伝導時間(SACT)を表すことになる。このような考え方は、非代償性を示す心房期外収縮であれば、心室まで伝導してもしなくても適用することができるため、心房期外収縮をみたら洞房伝導時間を推定してみるとよい。心臓電気生理検査において、さらに精確に洞房伝導時間を測定する方法として、この考え方を応用したNarula法(心房連続刺激法)とStrauss法(心房期外刺激法)が臨床で用いられている。

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