臨床心電図解析の実際 - 複雑な心電図の解析編
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18複雑な心電図の解析編波形異常-7 AnswerⅠⅡⅢ点線で囲んだ部分()においてリズムの変化がみられるが、この機序をどのように考えたらよいであろうか。心房房室結節心室洞結節R1R2R3R4R5R6R7Kent束???ⅠⅡⅠ、Ⅱ誘導の一部を拡大した。R1、R2、R5、R6、R7はいずれも洞収縮であるが、WPW症候群に典型的なバイパス(Kent束)を経由し、デルタ波を伴うwide QRS心拍を呈している。R3は先行するP波のない早期収縮で、R1、R2とほぼ同形態のデルタ波を伴うwide QRS心拍であることから、Kent束近傍から発生した期外収縮と考えられる。一方、R4はやはり先行するP波はないが、早期収縮ではなく、R3-R4間隔はほかのRR間隔よりも長い。また、narrow QRSでT波の極性がほかの心拍と逆であることから、房室伝導系を順行する房室接合部性補充収縮と考えてよいであろう。なお、R4のなかにP波が埋没している可能性が高いが、これが洞結節由来の順行性のP波であるのか、接合部由来の逆行性のP波であるのかを読み取ることができないため、この部分の興奮伝播過程に関する解析は困難である。

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