臨床心電図解析の実際 - 複雑な心電図の解析編
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はじめに日本医科大学 名誉教授/東武鉄道株式会社診療所 所長加藤貴雄 心電図の判読に慣れてくると,多くは一瞥して正常範囲内の所見か異常所見かを見分けることができ,異常と判断する場合の診断名・所見名もすぐに頭に浮かぶようになる.しかし,長年心電図の判読業務を行っていると,時折「ん?」と一瞬手が止まるような所見に遭遇する.個人差はあるであろうが,それまで見慣れてきた心電図と比べて,何か違和感を覚えるような波形異常や調律異常が目に留まり,もう一度しっかりと心電図を見直して診断を考えたという経験をお持ちの方も多いのではないだろうか. 本シリーズでは,これまでの「不整脈編」や「不整脈に結び付く波形異常編」を基本として,正しい診断に至るまでに何らかのさらなる解析を必要とするような,いわば複雑な所見を呈する心電図を取り上げる.一部には,目で見ただけでは診断が困難で,ディバイダーを用いて詳細に計測し直したり,計測値を二次解析したりしてグラフ化することによって初めて診断がつくような例,さらにはいくら考えても本当に適切な診断を下すことが困難な例もある.しかし,このような複雑な心電図を何とかして診断しようとすることには,一種のパズルを解くような楽しさがあるのも事実である.読者自らの手で解析を試み,複雑な心電図の解析を楽しんでいただければ幸いである.

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